SEN PRODUCT BLOG

千株式会社のエンジニアによるブログ

難易度が上がるSaaS業界とBPaaSの提供

 はじめに

こんにちは千株式会社のVPoEの橋本です。

この記事は、SEN アドベントカレンダー 2024の24日目の記事です!

千に入社して5年目を迎えこれまでサービス企画開発、組織作りといろんな活動を行ってきました。 時の流れは速くこの業界に20年近くかかわっており、多くのWeb系企業で永遠のテーマである開発力やプロダクト、ブランド力を高めたいという経営者の相談をお受けすることが少なくないです。

しかし「なぜ高めたいのですか、なぜ技術力が求められるのか、なぜエンジニアも顧客理解が必要なのか、なぜPdMが必要なのか?」という明確な理由が無ければ、高める意味が分かりません。そのため改めてなぜ千株式会社はエンジニアリング力やプロダクトマネジメント力を鍛えるべきなのかを解説したいと思います。

とっくにSaaS業界はレッドオーシャン時代

まずは歴史的な背景からですが、私が新卒エンジニアの20年近く前はSaaSという言葉が存在しないレベルでした。 そのため、あらゆるモノやコトがリアルからインターネット化するだけでものすごい価値でした。 「服を買いたい、雑貨を買いたい、掃除機を買い替えたい」を達成するためには最低3店舗を回らなければなりません。 そして商品の比較も各ジャンルごとに店舗を回って初めて違いが分かる状態でした。

しかしECができたことにより自宅に居ながらインターネット上で多くの商品を検索することができ、比較してから商品を購入し配送してくれる。 それはものすごい価値が大きかったと言えるでしょう。

それが20年たち2024年現在では多くのコトがインターネット化されつくされ各業界でSaaSのレッドオーシャン化が進んでいると思います。 はいチーズ!フォトも20年前は園の壁に写真が貼られた時代にインターネットで写真を閲覧でき購入できるということは革新的なサービスだったはずです。 今では我々の業界も同様にスクールフォトECサービスは当たり前になりつつあります。

このようにSaaSが当たり前になった時代では、一つのジャンルに多くの事業者が存在する状態になります。 結果的にEC、人事労務、経理処理、プロジェクト管理、BIツール、ドキュメント管理などなどサービス内容や単純な機能比較では顧客側では差分が分かりづらく営業難易度も高くなっているのではないでしょうか。明確な差別化やユーザの価値提供が弱いと価格競争に持ち込み安く売ること以外に武器がないため、利益を圧迫する結果になります。これではよろしくありません。

SaaS業界がレッドオーシャンだからこそエンジニアリング力やプロダクトマネジメント力を高めるべき最大の理由になります。 とっくにWebにするだけで売れる、利用していただける時代ではないということです。

目指すべきはロックインするサービス

そのような中でSaaS企業として価格以外に勝ち筋を作らなければなりません。 そのため個人的にはプロダクトが顧客にとってロックインできており、高い利益率が実現できていることを目指しております。

タスク管理など様々な業務フローを表計算ソフトでシステム構築している企業は多いでしょう、その企業や組織に汎用的なタスク管理システムを営業してもリプレイスコストと比較して必要性を感じない企業が多いと思います。つまり表計算ソフトがあまりにも汎用的過ぎて汎用的なタスク管理システムの価値提供が弱い状態なため導入メリットの説明難易度も高く、そして価格競争でリプレイスされやすい状況にもなるでしょう。

また逆に弊社で利用しているSlackを例にすると単にチャットコミュニケーションだけではなく、ワークフロー申請や各システムと連携したChatBotなど社内の情報交換としてChatOPSが定着しており他のコミュニケーションツールに乗り換えるのは困難なほどです。それだけではなく他のツールにするとエンジニアからの批判が出るレベルでSlackへの愛があるユーザも多くいるでしょう笑、これがまさにロックインされている状態です。

ロックインへ向かうためにプロダクト戦略として「ニッチな領域に絞る、汎用的なものではなく専門性の高いシステムにする、業務フローをAIによる自動化する、Web化できないところをサービス化する」など戦略として様々な方向性を決めることはできますが、これらを実現するのは経営者やPdMだけではなくのデザイナー、エンジニア、営業、CS、マーケの方など全社職種で取り組まんければなりません。

※それが簡単じゃないんだよ・・・・

取り組む内容

それでは具体的に何を取り組めばいいのか?という課題ですが大きく二つのテーマがあると思います。

あるべき姿を模索する

キーワード:顧客理解、ソリューション営業、PSFなど

顧客は自身の課題やこれが欲しい!をなかなか言語化できません。 そのため顧客と接点のある営業やCSは顧客の言葉だけで顧客理解ができていると思うと価値提供からズレていく可能性があります。

また開発もプロダクトマネージャーやUXリサーチの人だけが顧客分析を行ってもエンジニアやUIデザイナーは何を作ればいいか解決策が浮かばない、または指示待ちになってしまう。 このようなケースはこれからのSaaS開発の現場において競争が激しい業界ではなかなか成果が出ないでしょう。

そのため、本当に顧客を知っているか?という取り組みと、その顧客の課題が何のかという分析と、それに対する解決策は何なのか?を 営業からインフラエンジニアまで理解することがとても必要だと感じます。

様々な取り組みがありますが、そのために一つの施策としてエンジニアやデザイナーも園や写真館の現場を見に行くことを弊社では取り組んでおり 1次情報のキャッチアップの大切さを文化にしております。

顧客の行動変容を起こす

キーワード:オンボーディング、カスタマーサクセス、PMF、ファン化など

顧客から吸い上げた「我々として正しいと思うソリューション」が出来上がり、いくつかの成功事例ができた後も大切です。 全ての顧客が微妙に違う課題やオペレーション、状況の違いによりそのプロダクトが「その解決策は考えてなかった、今はベストマッチしない」ことの方が多いからです。

そこでオンボーディングやカスタマーサクセスチームが「我々が正しいと思う方向」へ導く必要が高く、「サービスを単に使ってください」では利用されない=解決されないことになります。

そしてこれからの時代に必要なこととしてユーザがファン化するための活動、結果的にファンが営業活動(布教)することも重要な点でしょう。 外資系サービスを中心にユーザ会(勉強会など)やカンファレンスなどを行い、顧客間でサービスの良し悪しを語り合い、ユーザが一層ファンになる仕組みを用意している企業は少なくないでしょう。

スクールフォト事業はBPaaSである

先ほどまでに記載した通りSaaS業界の難しさと取り組みは重要なポイントです。 そして弊社の主力事業であるスクールフォト事業「はいチーズ!フォト」は園の撮影イベントと写真館やカメラマンをマッチングし、撮影後に写真を検査・掲載を行い、保護者の方が閲覧・購入した写真を印刷・配送しております。 単なるECではなくカメラマンの派遣から印刷配送までサプライチェーンを提供してるため単にWebとデータベースだけのサービスではありません。

フォト事業はBPaaS

図の解説ですがはいチーズ!フォトが導入されていなければ下記のような業務を行う必要があります。

  • 園の先生が撮影イベントを写真館やカメラマンを探す、依頼する
  • 依頼されたカメラマンはスケジュールや撮影内容を確認する
  • ・・・(長くなるので割愛)・・・・・
  • 印刷して各園や個人宅に配送する

それぞれの園の先生やカメラマンの方が業務を行っていました。 そしてその業務はフォーマット化、標準化されていないのでみんな独自のルールで活動されています。 我々はそれらの業務に合わせたシステムを提供するのではなく、その業務自体を引き取り社内で標準化を行いシステム化することにより顧客のユーザ体験を良くしている事業内容のため、SaaSというよりBPaaS(Business Process as a Service)のジャンルになるわけです。

この場合、顧客(先生やカメラマン)が何をしているのか?それを理解し弊社が巻き取り自動化などできるのか?という相手にSaaSを提供するより、相手のことを自分たちでやるという方向性の思考が必要になります。 難しいのはそれだけじゃないんですけどね笑

それではまた!メリークリスマス!良いお年を!